粋裕コラム:日本における風力発電の現状と課題
再生可能エネルギーの主力電源化に向けて各国様々な動きがみられるところですが、このうち風力発電は国際的に発電コストの低下が進んでおり、経済性も確保できることが期待されています。今後、ますますの導入が期待されるところですが、風力発電の日本における現状と課題について、この記事では解説しようと思います。
日本における風力発電の現状
まず、日本において、風力発電の現状はどうなっているのでしょうか。世界の現状とも比べて説明していきます。
1:現状の風力発電量の比率は?世界と比べてどうなのか
日本における発電電力量に占める再生可能エネルギーの比率は、18%です(2019年データ)。内訳としては、太陽光が6.7%、風力が0.7%、地熱が0.3%、水力が7.8%、バイオマスが2.6%となっています。
参照:資源エネルギー庁 「エネルギー基本計画の概要」
一方で、世界の発電電力量における再生可能エネルギーの比率は、28%です。内訳を見ると、太陽光が3.2%、風力が5.9%、水力が16%、地熱とバイオマスの合計で2.6%となっています。
参照:「Statistical Review of World Energy 2021」
上述のとおり、日本においては風力は太陽光に対して1割程となっており、太陽光に偏っている現状が伺えます。それに対し、世界では風力が太陽光の1.8倍ほどに達しています。
上記の数字から、世界の状況とは裏腹に、日本では風力発電導入が進んでいない現状が伺えます。
2:日本における再生可能エネルギー導入の進捗
2009年からの太陽光の余剰電力に対するFIT制度、さらに2021年から全量全種を対象としたFIT制度によって、太陽光発電は2010年度から2020年度の10年間で、設備容量は約16倍の6100万kWとなりました。これによって、自然エネルギー発電設備は7600万kWに達しています(大規模水力発電を除く)。
一方で、風力発電の累積導入量は450万kW(ほとんどが陸上風力)で、10年間で約1.8倍となっており、太陽光発電の設備容量の14分の1に留まっています。
FIT制度とは?
FIT(Feed In Tariff)制度とは、再生可能エネルギーの普及を目的とした制度で、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を指します。一般家庭や事業者が再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定める価格で一定期間、電気事業者が買い取ることを義務付ける制度です。
再生可能エネルギーによる発電設備の設置には初期費用がかかるため、何年でコストが回収できるのか試算する必要がありますが、FITによって見通しを立てやすくなりますので、再生可能エネルギーの普及を促進しやすくなることが期待されています。
FIT法に基づく固定買取制度で売電事業を行うためには、発電設備を国から認定してもらう必要があります。
3:なぜ風力発電の導入が進まないのか
2012年7月にスタートしたFIT制度により事業認定された設備容量は、FIT制度開始前からの移行認定を含むと、2020年度末までで1億700万kWになっています。
このうち、風力発電は1500万kW以上が移行認定を含み事業認定されていますが、約30%にあたる約440万kWしか運転を開始していない状態です。
背景として、風力発電は、案件の導入までに、地元との調整や環境アセスメントのほか、立地のための各種規制・制約への対応が必要となり、時間を要する点があります。
また、陸上風力発電の導入において、開発しやすい平野部での適地が減少してきており、風力発電に適した場所から送電網へ接続する余地がなくなってきているという指摘もあります。
洋上については、遠浅な海が広がっている諸外国に比べ、急深・複雑な日本の沿岸部の特性があるため、導入が進みにくい背景もあります。
課題の解決に向けて:第6次エネルギー基本計画について
日本のエネルギーにおける中長期的な基本方針をまとめた「エネルギー基本計画」ですが、昨年10月に第6次基本計画が閣議決定されています。
日本のエネルギー政策は以下を重要な指針としています。
・安全性(Safety)が前提
・エネルギーの安定供給(Energy Security)
・経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストのエネルギー供給
・環境への適合(Environment)
上記の頭文字から「S+3E」という総称が使われており、S+3Eを踏まえた上で、第6次基本計画では、風力発電について以下の取り組みを進めていく旨が記載されています(一部を抜粋)。
適地の確保や地域との調整
改正温対法に基づく再エネ促進区域の設定(ポジティブゾーニング)による太陽光・陸上風力の導入拡大、再エネ海域利用法に基づく洋上風力の案件形成加速、風力発電の導入円滑化に向けアセスを適正化し、規制の合理化を行う。
系統制約の克服
基幹系統を増強し、北海道、東北、九州などの適地から大消費地まで効率的に送電するための系統を確保、出力変動に対応するための調整力の確保、系統側蓄電池等の活用を行う。
まとめ
上記のとおり、日本の風力発電の現状は課題がまだまだ残っている状況ですが、国として再エネの主力電源化に向けて、取り組みがなされているところです。
これらを推進するにあたって、民間においても取り組みをより活発化させていく必要があります。
粋裕株式会社では、正確な調査とノウハウの蓄積により、場所の選定から安心・安全な設備の提供まで一貫して対応しております。特に、小型風力発電において過去に設置した発電所においては、最高レベルの発電量を記録しております。
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